フィンランドは、島国である日本と違って、陸路で越境できる近隣国が3つあります。ロシア、スウェーデン、ノルウェーですね。ロシアとの国境のガードはいまでもなかなか厳しく、ロシア側へ行くには通常フィンランド人でもビザが必要になります。いっぽう、スウェーデンやノルウェーには西ラップランドのあたりから幾通りかの道が通じていて、あっけないほどに簡単に越境できてしまいます。さらに言えば、フィンランド西側の最北端の街キルピスヤルヴィの湖のほとりには、フィンランド・スウェーデン・ノルウェー3国の「国境点」が存在していて、記念碑の周りをぐるっと歩いて一周すれば、10秒で3国を回れてしまう、という愉快な体験もできるんですよ。

いっぽうで、フィンランドからはクルーズ船で渡れる外国もいくつか存在します。ヘルシンキなど南岸の街が接するバルト海は、東はロシア、西はスウェーデンなど北欧諸国、そして南方はバルト三国やドイツへと通じており、歴史的にも重要な交易の航路となっていました。今回は、観光客がフィンランド国内からクルーズ船を利用して気軽に足を運べる、代表的な異国の街への3ルートをご紹介しましょう。

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まず何といっても、首都ヘルシンキから気軽に行ける海外の街の代表格が、バルト海を挟んでお向かいに位置するバルト三国のひとつ、エストニアの首都タリン。

ayana-risteily赤い屋根の可愛らしい建物がひしめくタリンの旧市街

ヘルシンキからタリンまでの航行時間は、季節や運行会社にも左右されますが、最短わずか90分。十分日帰りで足を伸ばせるというわけです。もともと13世紀にハンザ同盟都市のひとつとしてデンマーク人によって開拓されたタリンの港のそばには、立派な要塞に囲まれた区域内に、石畳の道と赤屋根の愛らしい家々がひしめく世界遺産指定の旧市街が現存しています。この旧市街を半日ぶらぶら歩くだけでも、フィンランド観光では味わえない歴史と異国情緒を満喫できます。

ayana-risteily旧市街の中心に位置する旧市庁舎広場は夜でもにぎやか

エストニアではフィンランドと同じユーロ通貨が使われていますし、言語もフィンランド語によく似ていて英語もまずまず通じるので、ヘルシンキに日程に余裕をもって滞在する予定の人には、ぜひ足を運んでもらいたいですね。90分と短い船旅も、船内ではバーやレストラン、免税店がオープンし、ライブ演奏などエンターテイメントも充実しているので、その雰囲気を楽しんでいるうちにあっという間に到着します。ちなみにフィンランド人にとっては…タリンは、自国よりも安いお酒を買い付けたり、エステや医者にかかったり、と、旅行ついでに物価の安さにあやかりに行く場所、というイメージが強いです(笑)きっとタリンからの帰りの船では、フィンランド人たちがトランクいっぱいにお酒を持ち帰る奇妙な光景を目にすることでしょう。

ayana-risteilyタリンから安いお酒をたっぷり買って帰るのがフィンランド人スタイル

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次に観光客にも人気のルートが、ヘルシンキあるいはトゥルクの港から行き交っている、西の隣国スウェーデンの首都ストックホルムへの夜行船の旅。

ayana-risteilyヘルシンキと同じく海沿いに開けるストックホルムの旧市街

夕方にヘルシンキあるいはストックホルムを出た船は、一晩かけてゆっくり航行を続け、途中フィンランド自治領のオーランドにも寄港して、翌朝にそれぞれの街へ着港します。客船はまるで動くホテル、あるいは動く小さな街。さまざまなランクのキャビンがあるのはもちろん、船内にレストラン、サウナ、ショッピングモールなどあらゆる施設が収まっていて、終始ライブやイベントで賑わっています。 ストックホルムの街並みは、同じ北欧国といっても、ヘルシンキの街並みとはまた全然違った趣があります。ヘルシンキよりずっと歴史が古いのと、スウェーデンは王国なので、王宮や宮殿といった格式高い建物が集まっているのが一因と言えるでしょうか。ガムラスタンと呼ばれる海沿いの旧市街は、特に写真好きな人にはいつまでもシャッターを切っていたくなる美しさや複雑さです。通貨はスウェーデン・クローナという独自通貨なので、フィンランドから行く場合は両替が必要です。

ayana-risteilyスウェーデンは王国なので、街なかで衛兵の行進や交代式なども見られる

ayana-risteilyまるでショッピングモールのような、ストックホルム行き豪華客船の船内

最後に、夏季限定で運行しているちょっとユニークな海外航路が、フィンランド南東の街ラッペーンランタの港と、西ロシアの小都市ヴィープリとを結ぶ、歴史あるサイマー運河をゆく旅。

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visit-finland-saimaaサイマーのクルーズ船 Photo by Visit Finland/Aleksanteri Baidin

サイマー運河自体は全長たったの40キロあまりの細く短い運河なのですが、その距離をなんと6時間近くかけて、ゆっくり小型のクルーズ船で移動していきます。というのも、フィンランド側とロシア側では高低差が75メートルもあって、途中計8回も閘門を上がり下がりしなければならないからです。途中両国の国境をまたぐのは、何の変哲もない湖の上でのこと。

ayana-risteily歴史あるサイマー運河を小型客船でゆっくりと下っていく

つくづく国境とは人為的な見えざる線なのだなあということを実感できます。通常はビザ取得が必須のロシア旅ですが、実はこの船旅で日帰りまたは一泊で帰ってくる分には、なんとビザ取得が免除されます。また、船の運行会社が到着後のパスポートコントロールのフォローや、現地ホテルの予約や送迎までを一括して行なってくれるので、想像以上に快適にロシア領の滞在を楽しむことができるのですよ。 さて、このヴィープリとは、いったいどんな街なのか。フィンランドの歴史においてなぜ特別なのか、については、別の記事で詳しくご紹介しますね。

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ayana-risteilyフィンランドとロシアとの見えざる国境を、船員が旗を振って教えてくれる

ayana-risteilyヴィープリは、もとフィンランドといえども今では完全にロシアの街

Cover Photo by Visit Finland

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こばやし あやな
2011年にフィンランド中部の都市ユヴァスキュラに移住し、国際結婚を経て、2016年にユヴァスキュラ大学の修士課程を修了。 在学中から「Suomiのおかん」の屋号で在住ライター、通訳翻訳者、メディアコーディネーターとしての活動を始め、大学卒業後は会社を設立して個人事業を続けています。地方都市のツーリズムや文化・スポーツ全般、そして特にフィンランドのサウナ文化についての調査や執筆、コーディネートを多く手がけています。